第7話「新規事業への挑戦」

 平成に入ってからの三岐鉄道は、国や沿線自治体からの鉄道近代化設備整備費補助などの交付を活用して、1997(平成9)年までにほぼ毎年のように冷房車両を1編成ずつ導入したり、1999(平成11年)までに富田~東藤原間の本線部分を全て重軌条更換(レールを高規格の重量の重いレールに取り替える)を実施するなど、鉄道事業の設備拡充に努めた。

 また、旅客誘致施策の一環として、1997(平成9)年に大長駅を移転改称して北勢中央公園口駅を新築開業したが、同時に無料で電車内に自転車を持ち込むことができる「サイクルパス」列車の運行を開始し、新たな鉄道利用客層の獲得を図った。

 そのような中で、2005(平成17)年に開港が予定されていた中部国際空港の建設工事に使用する埋立土砂を鉄道輸送するというプランが、太平洋セメント社からもたらされたのは、1999(平成11)年7月のことであった。

 しかし、秩父鉄道や大井川鉄道から電気機関車を購入・借入したり、列車交換・待避設備の新設などのインフラ整備、鉄道係員の確保など輸送実現に必要な諸課題を克服し、中空埋立土砂輸送を実現するに至った。この輸送は2000(平成12)年7月から2002(平成14)年12月まで続いたが、全社を挙げての輸送体制が結実し、開業以来最大のプロジェクトが成功した。

 また、2001(平成13)年7月に開業70周年を迎えた当社では、記念事業として西藤原駅前公園を整備し、開業時のSL102号機などの車両を展示するとともに、公園内に専用軌道を敷設し、毎週日曜日にミニSLを運行する「ウィステリア鉄道」を発足した。ウィステリア鉄道は、2015(平成27)年3月までボランティアスタッフらの手で運営されていた。

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