第8話「北勢線運行開始」

北勢線の歴史は三岐線(富田~西藤原)より古く、1914(大正3)4月5日に軽便鉄道として、大山田(西桑名)~楚原間14.5kmの運輸営業を開始したのがその始まりであった。翌1915(大正4)8月に桑名町(桑名京橋)~大山田間開通、1916(大正5)年8月には楚原~阿下喜東(六石)間開通と、徐々に路線を延伸し、そして奇しくも三岐線開通日の15日前である1931(昭和6)7月8日に阿下喜東~阿下喜間の開通と全線電化を果たした。

 一方、北勢線の経営母体は開業時には北勢鉄道㈱であったが、1934(昭和9)年6月に北勢電気鉄道㈱に商号を変更し、1944(昭和19)2月には本稿第2話でも紹介した戦時交通統制により三重交通㈱に統合された。そして、1964(昭和39)2月には三重交通㈱の鉄道・バス分社化により三重電気鉄道㈱となり、さらにその三重電気鉄道㈱は1965(昭和40)年4月に近畿日本鉄道㈱と合併し、2003(平成15)年3月までは近鉄北勢線として運輸営業が行われてきた。ちなみに、路線名称を「北勢線」と定めたのは、三重交通時代の1944(昭和19)年3月1日のことであった。

 この北勢線を近鉄社から事業譲受して、三岐鉄道北勢線として運輸営業を開始したのは、2003(平成15)年4月1日のことであった。

当初北勢線は2003(平成15)年3月で廃線となることが決まっていたが、路線存続を願う多くの沿線住民の期待と地元自治体からの強い要請に応え、三重県や沿線1市3町(当時、合併により現在は桑名市、いなべ市、東員町の2市1町)からの支援を受けて、同年4月から三岐鉄道が運行を受託することになった。

 北勢線運行開始にあたり、三岐鉄道では、沿線市町からの財政支援や国土交通省による幹線鉄道活性化補助等の助成を得て、軌道強化、列車行き違い設備増設、パーク&ライド施設整備他様々な事業を実施した。その結果、列車本数増加や運行時分短縮をはじめ各方面で改善が進み、お客様の利便向上に一定の効果をもたらした。

 また、2003(平成15)年5月から三岐カラーの車両運行を開始し、2004(平成16)年4月に新駅・大泉駅を開業、2005(平成17)年3月には星川駅・東員駅を同時開業、さらに2006(平成18)年8月から冷房付車両の運行を開始するなど様々な事業を実施するとともに、「サンタ列車」や「ナロウィントレイン」等のイベント列車運行他、沿線市町と連携して各種旅客誘致事業を展開し、路線活性化に努めている。

トップへ戻る